人生100年時代の構造と、ビジネスの原則

山登り 顧客

ご存知の通り、ベストセラー書籍をきっかけに「人生100年時代」の概念が浸透しました。

人生100年時代の捉え方

著者がイギリス出身のロンドン・ビジネススクール教授であることからも、先進国を中心とした世界共通の話で、「個人の人生」に焦点が当てられています。

これに対して、高齢化が急速に進むことで、社会維持に支障をきたし始めているという課題は、歴史上、日本が先駆けであり、「社会環境」の話です。

高齢化による社会維持への影響は、出生数と死亡数が真因となり、予測可能な人口ピラミッドと直接的に因果関係があり、継続的で連続的な社会課題です。

すなわち、全ての人が当事者であり、原因と結果に関係している課題です。

自律的、主体的な選択

私たちは弱いもので、退路があれば現状維持か、楽な方に流れがちですが、この課題に退路はありません。

同じ環境でも、自然環境に興味を示す人は限定的ですが 、自分が所属する社会環境には、大半の方が興味をお持ちだと思います。

この環境を「社会の一員として」どう対応するかを考え、行動する方は、環境と自分に能動的です。

この環境に「自分が」どう対応するか考え、行動する方は、自分に能動的です。

私達は、組織の中にいようがいまいが、今まで以上に自律的、主体的な選択を迫られことを薄々、人によっては明確に、気付いています。

ビジネスと人生100年時代の関係

個人の長寿人生という「内部環境」と、生産・消費人口が減少し続ける「外部環境」の中で、大半の時間やエネルギーを注ぐ、仕事やビジネスの基本原理をどう考えたらいいのでしょうか。

ビジネス面でよく見聞きする話は、70歳、80歳まで現役で働くことや、資産を増やすために投資を行うこと、不足するITエンジニアは高報酬が期待できること、シニアマーケットを狙った事業を手掛けること、などですね。

自身の気質や考え方などに適合するのであれば、やらないよりやった方がいいですし、ないよりあった方がいい話かもしれません。

今後、今以上にこういった話は具体化すると思いますし、変化を迫られる場面は幾度となくあるでしょう。

そんな中でまず必要なのは、長く生き、長く働くのに耐え、骨格となる生き方や働き方の価値観や哲学を、自身の中で明確にすることではないでしょうか。

信じることに一貫性がないことほど、辛いものはありません。

また一貫性がなければ、誰かの意図や発言などに踊らされ、せっかく良くしようと取り組んだつもりでも、改悪につながったり、ひどい場合は被害に遭ってしまうかもしれません。

不安や焦りが判断力を狂わせる

典型的な例は、「簡単で楽に儲かる」などローリスク・ハイリターンを謳う、サービスや金融商品に手を出してしまうことです。

テクノロジーの影響などもあり、表面的な情報のライフサイクルは、年を追うごとに早まっており、個人間の情報格差が広がりが、被害を助長している面があります。

ハイリターンをことさらに強調される方々の実績は、特殊な要因によるものだったり、再現性が低かったり、虚飾である場合が大半です。

では、こういった対象にお金を投じてしまう人は、どんな方でしょうか。

親族も含め、自身が長寿であろうことへの不安や焦りはあるものの、できれば苦労や努力はしたくない。

だからこそ、隣の青い芝に見えるそのフィールドで成功した人に頼ることで、自分も同じ成果を手に入れたいと、思っている方です。

商品・サービスの価値とは

誤解を恐れず申し上げるならば、真っ当な商品・サービスは、お客様ごとに異なる個別事情にも、同じお客様でも時間軸の変化にも耐え得る、本質的価値を持っています。

また、お求めになるお客様自身が、商品・サービスの指し示す方向に向かって努力した結果、効果や成果を実感できるもので、商品・サービスはあくまでサポートが役割です。

そのような方や事業者は、使ってみて「良かった」と思わせる商品・サービスの開発や改善に大半のエネルギーを使い、購入前に「良さそう」と思ってもらうセールスでは、嘘や偽りのない範疇で説明責任を果たします。

「簡単で楽に儲かる」ハイリターンを謳う方は、購入前の「良さそう」と思わせるセールスに大半のエネルギーを投じ、実際に使って「良かった」と思わせる取り組みには、僅かなエネルギーしか使いません。

すなわち、商品・サービスの品質が低かろうが気にも留めず、それによってお客様がどうなるかには興味や関心がないため、画一的で、個別対応なんて行いません。

事業者の根底にある考え方

前者と後者の根本的な違いは、主体的に他者を利しようする意思、行動、自身の在り方です。

主体的に他者を利しようとする人は、自らの行動を通じて、価値のやり取りの本質を理解しているため、人や物事への選球眼が鋭く、高い確度で見極めることができます。

一方で、「簡単で楽に儲かる」と謳う人も踊る人も、他の人には泣いてもらって、自分だけ助かろう、いい思いをしよう、という考えが根底にあります。

踊ってしまう人は、謳う相手を少し胡散臭いと思いながらも、罪悪感がある分だけ身近な人にさえ相談せず、相談しないが故に他者の意見は耳に入ってきません。

多少のリスクはつきものだけど、今やらないと自分だけ取り残されてしまう、という強迫観念に駆られて飛びついてしまう。

ここまで言い切れるのは、私自身がこのような変遷を、かつて経験したからです。

人生100年時代におけるビジネスの原則

自らが原因となり、結果も受ける「人生100年時代」の基本構造は、多くの方の働き方や生き方と同じ構造をしています。

自分と他者や環境を、切り離して考えようとすれば、その報いは必ず返ってきます。

もし自身が環境の原因になっているのだとしたら、自分ぐらい、主体的に利他的であり続けたいと思わずにはいられません。