キャリアと成長は時空の力を利用する

仕事を変える 自己実現

「年齢を重ねるほど、年月の経過が早く感じる」とはよく耳にする話です。

先日、御年82歳で現役のコンサルタントとして活躍されている方と会食させていただきましたが、やはり年齢と比例するかのように、毎年、経過する年月が早まっていると感じるそうです。

主観的な時間と空間

能動的に集中して取り組んでいる時は、もうこんな時間が経ってしまったと感じるものですし、充実していると感じます。

逆に、受動的で空虚に過ごしていた時は長く感じるものですが、何をしていたかさえ覚えていません。

どんな人にも同じように流れる「客観的な時間」はありますが、同時に人や場合によって異なる「主観的な時間」も存在します。

また、私は幼い頃、横浜の実家近くにある三ツ沢公園に入ると、向こう側の出口が分からないほど果てしなく大きなものに感じ、恐怖すら感じたものでした。

しかし大人になると、同じ公園を端から端まで10分ほどで歩くことができ、公園の広さは小さくなったように思えました。

先ほどの82歳の大先輩にこのことを話すと、彼は体力が落ち足が弱ってくると、中年の時には大きいと思わなかった公園でさえ幼い頃の空間認識に戻り、再び拡大したように思えたことを話してくれました。

「空間」も「時間」と同様、測定できる客観的な広さがあるのと同時に、主観的に感じる広さがあります。

「時間」と「空間」は主観的であり、かつ、相対的なものであるというアインシュタインの原理を、私達は日頃の生活の中で感じています。

空間を広く感じると、ワクワクする人もいれば見えない部分への不安を感じる人もいます。

狭く感じれば、自分やその空間をコントロールしている感覚を持つ人もいれば、飽きや退屈を感じる人もいます。

私達の成長は、時空への快感を利用する

これは物理的な空間の話だけではなく、自分が関わる仕事や人生でも同様です。

目指していた限りなく遠くに感じていた世界に到達してしまい、一瞬満足はするものの同時に飽きを感じ、さらに広い世界を求めようとする。

この繰り返しが成長のスパイラルではないでしょうか 。

もちろんこの成果は、先ほどの主観的な「時間」が大きく関係しています。

成長しようと重要なことに時間を投下していれば、すなわち、第二領域に集中していれば、自ずと成果が出ますがやがて飽きを感じます。

次の広大な空間や世界に興味を示し目標を立てる。

同じように時間を集中して投じると、同じように成果が出て同じように飽きを感じる。

このように主観的に感じる「時間」と「空間」への心地いい負荷が快感となれば、意識するまでもなく成長しているものです。

すなわち「重要なことに集中する快感」と「空間・世界を捉えていく快感」を求めれば求めるほど、成果に恵まれるのではないでしょうか。

キャリアも、時空への快感を利用する

しばしば若いビジネスマンの方からキャリアの相談をいただきますが、これまでの話と同じことが当てはまります。

ドラッカーが言うように最初の仕事はくじ引きです

最初の仕事はくじ引きである。最初から適した仕事につく確率は高くない。

しかも得るべきところを知り、向いた仕事に移れるようになるには数年を要する。

『非営利組織の経営』(ドラッガー著、ダイヤモンド社)

初めから自分の希望通りの仕事で結果を出せる人もいれば、望まない部署に配属され、成果が出ない方もいらっしゃるでしょう。

結果が出なかったり意欲さえわかないのは、自分が原因なのか会社が原因なのかを明らかにする必要があります。

「得るべきところはどこか」を考えた結果が、「今働いているところではない」ということならば、次に問うべきは、「それはなぜか」である。

「組織が堕落しているからか、組織の価値観になじめないからか。」

いずれかあるならば、人は確実に駄目になる。

自らの価値観に反するところに身を置くならば、人は自らを疑い、自らを軽く見るようになる。

組織が腐っているとき、自分がところを得ていない時、あるいは成果が認められない時には、辞めることが正しい選択である。

出世はたいした問題ではない。

『非営利組織の経営』(ドラッガー著、ダイヤモンド社)

組織や組織と自分との関係に問題があると判断すれば、上記を参考に検討することをお勧めします。

では自分が原因だと判断した場合はどうすれば良いでしょうか?

私は、今いる場で数年(累計)持てる力を出し切ることをお勧めします。

こう言うと、人材の流動があたり前となり起業も容易となった最近の風潮では、時間の無駄という意見が大半なのも認識していますし、短期的にはその通りかもしれません。

しかし、何ら習得した実感もなく中途半端に辞めてしまった場合、その空間で経験し学べることがあったにも関わらず、空間の入り口に戻ることになります。

出口を目指し集中して時間を投入していれば、方角が少しずれていながらも、空間内を移動しているわけですから、次に望む世界のスタートラインとの距離は縮んでいます。

外的変化は内的変化が因となり遅れて起こるため、環境を変える(外的変化)前に、「重要なことに集中する快感」と「空間・世界を捕まえる快感」を通じた自身の変化(内的変化)を実感することが、遠回りに見えて、最も早く成果に直結する因となるのではないでしょうか。