自分や自社のために、自身を信用しない

お金 マネジメント

他者がどんな習慣や生活スタイルを重視しているのかは、本人に尋ねてみなければ分からないものです。

同様に、組織の仕組みやどのようにマネジメントしているのかは、外から見えづらいものです。

人材採用は自社評価の機会

支援先の社長から聞いた話です。

人材採用を進める中、フルタイムで働き、ゆくゆくは会社の将来を担ってもらえるような若手男性社員の採用をイメージしていましたが、求職者の売り手市場ということもあり、思うような採用ができませんでした。

友人の経営者に勧められて、子育て中の女性に焦点をあてて採用活動を進めると、面談には非常に優秀な方が何人もいらっしゃり、2名を正式に採用しました。

ところが、OJTといえば聞こえはいいですが、業務が未整備でマニュアルもなく属人的であることを理由に、入社1日目に1人が退職してしまいます。

育児中の女性は、保育園などに預けていても時間的制約があるため、時間をかけて試行錯誤してもらう仕事を担いにくいのが現実です。

例えば経理や人事、システム運用など、業務内容が明確な職種であれば、蓄積された経験に加え、 かつて在籍した仕組みが整った他社と相対化して自社に応用してくれる方もいらっしゃいます。

彼女達は多くを望んでいるのではなく、業務フローや業務内容が整理されていて、お子さんの病気などの突発的な事態にも可能な限り対応しようとしてくれる環境であれば、これまでの経験や知識を余すとこなく発揮してくれるものです。

社内に新たな人材を迎え入れるとは、外部の目が入るということですが、マネジメントの仕組みやコンプライアンスなどに対して敏感な方が多いのも確かです。

社長が、社内を外に晒す気持ちで会社づくりをしなければ、経験ある優秀な彼女達に働き続けてもらうことは難しいでしょう。

安易に自身を信用しない

またこんなケースもしばしば見聞きします。

会社が儲かっているとき、社長も普通の人間ですから慢心や傲慢さが顔をもたげるものです。 

それが高じて、メディアを賑わすような私的流用に手を染めてしまう人が現れます。 

日産の元CEO、カルロス・ゴーンの事件を見聞きしたときに、ドキッとしたのは私だけではないのでは。
(もちろん手を染めているわわけでありませんが、、自分もそうなる可能性がゼロではないことに対してです!念の為)

自らを利する、傲慢で貪欲な願望を成立させるための周到にロジックまで用意してしまえば、破滅への道をより強固なものにします。

しかし誤解を恐れず申し上げるならば、多かれ少なかれ、自らを利する気持ちは生まれるものですし、その気持ち自体をなくすのは不可能ではないでしょうか。

頑張って自社が儲かったんだから、それをどう使おうが文句を言われる筋合いはない。

そんな本音を誰も知らないだろうと思っているのは本人だけで、周囲の決して少なくない方はご存知で、余計な言動で自身が不利益を被らないために、行動に移していないだけです。 

権力者の尊大な態度がエスカレートし、我慢ならなくなった周囲の反逆行為が、日産の事例なのかもしれません。

こんな事態にならぬよう、責任とともに権限を有する社長自身が取るべき行動は、自らや自らの組織を外にさらそうとすることです(たとえ1人会社であっても同様なのでは)。

外部にさらすことの効用

個人でいえば、自分の目標やその進捗などをツイッターやブログなどにさらけ出している人を、時折見かけます。

これに対して、組織内部をさらす機会は多くないと思いますが、その日は突然訪れます。

社員の採用、税務調査、出資、会社売却など、そんな状況になってから抜本的に手を打とうと思っても手遅れであることに加え、自身の感覚が麻痺してしまっている場合が少なくありません。

利己的モードが脳内を占有すると、面倒なことを排除して言い訳で塗り固めた状態になるため、誰にも制することができず、どん突きまで進み、さらには後戻りできません。

人間は弱いもので、このような事態を自分の意志だけで防ぐには限界があります。

放っておけば傲慢で貪欲な生き物ですから、自身や組織内部を外にさらす機会を、日頃から求める必要があるのではないでしょうか。

もちろん全てを公にすることを推奨しているわけではありません、できない場合の方が多いでしょう。

だからこそ、信頼できる第三者に話すことで、自分が発したという事実が自身の中に刻まれることが重要であり、さらには自分自身に言い聞かせることにもなります。

他者の存在のありがたさは、そんな時にも感じるものではないでしょうか。