自己実現を考える際に、留意したいこと

吉野家 自己実現

訪日外国人の増加と共に、インバウンド関連の事業者さんが増加されていますが、数社から定期的にご相談をお受けしております。

日本人が外国人の視点を提供するには

インバウンド市場が成長市場であることは間違いないのですが、共通する悩みの1つに、外国人の方のニーズをつかむことができず、日本人スタッフの独りよがりな情報やサービスを提供した結果、成果に結びつきにくい、というのがあります。

実証や実績がある、典型的な観光情報やサービスは別として、外国人の方が何に興味を抱くかは、視点というより、感覚に左右される部分が大きいのではないでしょうか。

日本の公共交通機関が、常に時間通りに運行すること、自動販売機がどこにでもあることなど、日本人には普通なことが、彼らにとっては驚きに値するわけです。

さらに、外国人から見た日本を紹介する、テレビ番組の視聴率が好調のようですが、「外国人は意外なことに興味を持っているんだな」という、いわば、副次的な日本人向けコンテンツも人気のようですね。

仮に、生まれも育ちも日本人だけのインバウンド事業者さんが、日本に興味ある外国人にインタビューしたり 、観察したりして、膨大な時間の中で仮説と検証を繰り返せば、長期的なビジネスを構築できるかも知れません。

しかし提供するものが、SNSのようなシステムや仕組みではなく、コンテンツである場合は苦戦するのではないでしょうか。

視点や感覚が価値を持つ

視点や感覚を提供できるのは、その場に一定時間、身を置いた人のみであるため、現在もインタビュー形式のコンテンツであれば有効なのです。

母国に長年居住しつつも、日本に興味を持ち、実際に何度か日本を訪れた経験があるような方がいらっしゃるとすれば、インバウンド事業者さんはこの方に、報酬を惜しまないのではないでしょうか。

このような人的ネットワークにアクセスできるかが、競争力を左右するということを、事業者さんも痛いほど分かっています。

極端な例をご紹介しましたが、その道を経験した人にこそ、提供できる価値があります。

ある人にとっては普通のことが、相手にとっては価値を持ち、取引される対象となる場合があります。

何100年と受け継がれてきた、日本の囲炉裏を囲んだ食事風景は、ここに住む人達にとっては幼い頃からの光景であり、生活のごくありふれた一部ですが、外国人の方は、お金を払ってでも体験したいと、わざわざ足を運びます。

相手にとって価値があれば、交換ニーズが発生しますが、双方が納得する手段として、金銭の場合もあれば、物々交換などバーターの場合もあるでしょう。

このような考え方と同様、「できることを活かす」ことができれば、自己実現の一類型を為すことが可能となりますよね。

「できること」の前に、「嫌なこと」を考える

「できることを起点」とするビジネスの場合、初期投資、固定費とも低く抑え、長期に渡って自身の得意なことを、規模感を追求せずに展開するイメージかと思います。

一方、ビジネス書籍の定石である「市場起点」は、資金調達の機能を重視し、先行投資を充実させ、短期で成長を目指す考え方になりがちです。

市場起点は、市場成長スピードや他のプレーヤーを意識せざえる得ないためです。

私はどちらとも経験しておりますが、心穏やかに生活とのバランスが取れる、前者に向いていると思っていますが、人によって好みや適性は別れるものです。

「何ができるか」の前に、方向性を考える上で自身に投げかけたい質問は、自分は「何が嫌なのか」、「何が我慢できないのか」などの方が、優先順位、劣後順位とも明確になることがあります。

「できること」と「嫌なこと」に、「自身」と「他者」を掛け合わせ、多面的に見つめることで、より良い選択が可能となるのではないでしょうか。