「自立」と「自律」の大きな隔たり

自立 自己実現

働くことの意識や形態が変わる中、スキルや知識などの道具の前に、自らを動かす哲学や価値観を明確にして、行動の土台とするが重要です。

自立と自律の違い

ここでポイントとなる概念は、「自立」と「自律」です。

「自立」は、技能・経済力といった「外的な」要素による独り立ちであり、いわば「外的な独立」です。

「自律」は、哲学・価値観・理念といった「内的な」要素による独り立ちであり、いわば「内的な独立」です。

「自立」は、職業人として独り立ちして生活ができ、業務がこなせる状態で、経済的自立や技能的自立が該当します。

「自律」の「律」とは、規範やルールといった意味です。

自らの規範やルールを持ち、それにしたがって評価・判断・行動する状態を「自律」と呼び、律を持つためには、自分なりの哲学・価値観・理念といったものが、必要となります。

つまり「自立的」であることと、「自律的」であることには、大きな隔たりがあります。

自律的であることの重要性

自分の確固たる律を持ち、ぶれない判断により進んでいけることが、強い個を作り、強いキャリアを形成していきます。

いくらうまく定型業務を能力的にこなせる「自立的」な人でも、自ら判断ができずに指示を期待し、他者に決断を委ねる「他律的」な人は、弱い個であり、弱いキャリアしかつくれません。

哲学・価値観・理念などに基づかなければ、方向性を定める人にはなれません。

方向性を設定できなければ、現状との差異を認識して、課題を設定することもできません。

課題を設定する、すなわち、より良くするためのアジェンダが認識できなければ、合理的な解決策を作ることもできません。

常に解決策の指示がないと行動できない人は、変化する現場で対応することもできません。

すなわち、英語やプログラミングの能力に秀でていながら、哲学・価値観・理念が明確でない、あるいは、持っていても意思表示しなければ、定型業務しか任せられない人材であり、自分で業を興すには、ほど遠い状況なのです。

オーストラリアの教育学者、リントネルの言葉です。

人間は何を知っているかではなく、何をしようと思っているかによって、価値・無価値、能・不能、幸・不幸が決まる。

(『君を成長させる言葉』酒井穣、日本実業出版社)

事情により、報酬や給料のために波風を立てず、自律的であることを放棄してる方がいらっしゃるのも認識していますし、一つの生存戦略であるとも思います。

しかし、その中で失う自尊心、精神的安定などは、お金に変えることのできない、その人自身のかけがえのないものではないでしょうか。

まして、仕事中だけ我慢をするというのには、あまりに長すぎる時間ですし、被る負のエネルギーは計り知れません。

私もそのような時代がありましたので、良く分かります。

ですから、自律的であることを根本に、社会を駆け抜けていく働き方や生き方をお奨めしたい訳であります。

一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ、ただ一燈を頼め。

(『言志四録』佐藤一斎 著、岬龍一郎 訳、PHP研究所)