変えるには、リスクが伴う
変えなければ、より大きなリスクが伴う
アメリカの宇宙飛行士、海軍大佐で、ジェミニ宇宙船、アポロ司令・機械船、アポロ有人月着陸、スペースシャトルの4つを経験している、唯一で最初の人物でもあるジョン・ヤングの言葉です。
今の時代、ビジネスに携わっている方には、特に響く言葉ではないでしょうか。
変わりたいと思った時の落とし穴
変えようとする対象は、会社だったり、事業だったり、ご自身のキャリアだったり、考えや価値観だったり、人によって様々であるかと思います。
変わりたいと思った時、どのように考え、行動することが有効なのでしょうか。
足繁く通ってる店は、何らかの理由があるからこそ、そこに落ち着いているわけですが、惑わされる時があります。
素材を活かした、その店のイタリアンが好きなのに、新しくオープンした話題の他店に行って、やっぱりいつもの店がいいな、と思ったりします。
自分の髪の癖や、頭の形を理解してくれている、馴染みの美容院の予約が取れなくて、別の美容院に行き、その出来と自らの行動を悔やんだりします。
すなわち、私達は、表面的な理由で本質を見誤り、結果的に不利益を被る場合が少なくありません。
まして、性格的にとか、人間的になど、根本的に変わりたいと思った場合、振る舞いだけ変えても効果は薄いようです。
深いレベルで変わろうとする
他人の意見や流行りなどが気になり、地表をうろうろするのではなく、地面を掘って深層に分け入り、硬い岩盤である自身の深層レベルを、ちょっとずつでも横に堀り進んでいく。
そんなイメージの行動が必要ではないでしょうか。
これには、行動を伴わせることを約束した、自身の基準を明文化しておく必要があります。
その上で、変わると決める勇気と、不必要なものを切り捨てる勇気を持つことで、一歩前に進めることはできるはずです。
勇気は誰でも平等に持っていますが、上手に使える人が限られているので、変えることができる人と変わらない人がいるのです。
勇気は、幸福という無尽蔵の宝の扉を開く鍵ですが、多くの人がそれを封印し、臆病、弱気、迷いの間を漂流しています。
また、何とか勇気を発動することができ、変わるための行動を起こしても、成果がなかなか出てこない段階や時期に、迷い出だし、他人の言葉に影響されて目移りしたり、かつての楽な世界に戻ろうとする力が働きます。
目標の対象や背景が肝要です
変化しようとする時に、必ず訪れるこの段階で、進化の継続を支えてくれる力は、月並みですが「目標」です。
しかし重要なのは、目標の対象や、その目標を持つに至った背景です。
目標の内容は大きく、自分の願望と、他者や社会への貢献の2つに別れるようです。
ソフトバンクの孫正義社長が師匠と崇めた、経営学者の野田一夫氏は、「自分の願望を表したものが夢であり、社会をどう変えたいかが志である」と、わかりやすく表現されています。
私自身も、1回目の起業は「自分が儲かりたい、会社を大きくしたい」という自分の願望が中心の目標でした。
その会社を売却した2年後の、2回目の起業では「未婚化・少子化という社会課題の改善の一助となりたい」という思いが真ん中にあり、両者の違いを体感しました。
自分は稼いでいる人に見られたい、という人もいるでしょうし、稀有なスキルや実績を持っていると誇示したい、という人もいます。
一方で、野田氏の「志」にあたる、社会や他者への貢献を目標として掲げている人は、うがった見方をすれば、「よく見られたい」という自分の願望も含んでいます。
さらにうがった見方をするならば、そこに留まるだけでなく、返報性を計算した言動であり、より欲深い願望の吐露なのかもしれません。
人に役立っているという事実に清々しさを感じつつも、クリーンなイメージをまといながら、直接の相手や、その功績を見た人からの返報性を期待している、という側面は否定できません。
もちろん、そのような考えや行動が、悪いとか、汚いとか、問題だと、言いたい訳ではありません。
なぜなら、他人の幸せために自分を犠牲にしている訳ではなく、他人を犠牲にして自分が得しようとしている訳でもなく、他人に貢献しながら自分もメリットを享受しているからです。
商売でいうならば お客様の悩みを解決するという貢献を果たし、それに対する正当な対価を報酬としていただき、健全な運営と再投資に充てることが、さらなるお客様への貢献につながります。
すなわち、自分の願望の中に、他者や社会への貢献を含めることが、賢明であるといえるのではないでしょうか。
自身と目標は一体か
しかし最後に、最大の関門があります。
それは、自分が本当に納得できて、24時間365日、付き合っていけるかという点です。
こう発言すれば、周りから「いい人だな」とか、「尊敬されるかな」などと、淡い期待を抱き、立派なスローガンを打ち出すことはできますが、自分を騙し続けるのは辛いものです。
目の前の行動を、心の底からやりたいと思えるか、その行動の先に、人に憶えられたい自身の姿が明確に想像できるかという質問に、自信を持ってイエスと答えることができるならば、怖いものはありませんね。
難事、問題、困難、邪魔、障害、厄介事がない道は、どこにもありません。
表面的ではなく本質的なレベルで、自らの基準を変えることを厭わない勇気を発動し、行動を起こす。
そのために必要不可欠な目標が、他者や社会への貢献を含んだ自分の願望となるよう、自身を取り巻く現実を見て、自身を省みることが肝要ではないかと思うのです。自戒を込めて。