顧客との接点と意思決定

観光 顧客

先日、観光業を営む上場企業の社長を退任された方と、会食する機会がありました。

観光施設は、旅行自体の目的となる東京ディズニーランドなどでない限り、宿泊や移動手段など、旅行や出張の中心要素を決めた後に、検討される対象のようですね。

それでも、顧客が家を出てから帰宅するまでの、旅行や出張の全行程やその選択基準などを考えなければ、自社が価値を提供することはできなかった、と強調されていました。

全体文脈と現場主義

私は、会社員時代と初めて起業した会社が、女性向け化粧品や健康食品の消費財メーカーで、商品開発や営業・販売では、顧客が朝起きてから寝床につくまでの生活サイクルを調べたり、ターゲットに近い方の話を聞かせてもらいました。

何が好きで、何に不満や悩みを抱えているかなど、商品の使用場面に限定せず、顧客に思いを馳せなければ、商品を買っていただくのは難しいなとつくづく思っていました。

顧客の生活の中で、自社商品やサービスが関わる時間はほんの一瞬かもしれません。

それでも自社商品やサービスを、全体像の中で考え抜く重要さについて、前出の元社長と大変に意気投合しました。

また、効率や合理性を度外視してでも、自分の目で見る、自分で体験してみる、自分で会いに行ってみるなど、現場・現物主義を貫くという点も意気投合しました。

生きた情報からの意思決定

幕末に松下村塾を創設した吉田松陰の他にも、多くの学者がいましたが、松陰が若者に与えた影響力は突出していたそうです。

漠然とした政治論議が横行する時代に、半生を旅に費やし、着実なる見識を示し、机上の空論をこねくり回すような姿勢はありませんでした。

どこまでも行動と挑戦の中、生きた知見と洞察で人を感化する開拓者だったのです。

ビジネスに限らず、新しい価値を創り出す役割と責任を自覚した人は、自ら動かずにはいられなくなるのでしょう。

商品・サービスは、品質が良いに越したことはないですが、お財布事情もあります。

かといって安いものを買い、基本機能も果たせないぐらい品質が悪ければ、不満足と後悔だけが残ります。

品質と価格の軸だけで、全ての顧客ニーズは語れませんが、設定した軸のどのニーズに応えるかは、事業者の「そうであるに違いない」をこねくり回しただけだと、的外れになりがちです。

すなわち、一緒に生活しているぐらい、一緒に旅行してるぐらい、相手の生情報を取得し、全体文脈の中で自社資源の投入を決める必要があるのではないでしょうか。

であるならば、その権限を持つ意思決定者が、自社商品・サービスを利用される方との接点を持って然るべきです。

意思決定者の手元に残す仕事

もちろん、事業や会社規模が大きくなるにつれ、効率化、仕組み化を推進する経営マネジメントは重要ですが、顧客を知ろうとする営みは、現場・現物主義を支える仕組みに留めるべきではないかと思うのです。

規模が大きくなっても、経営者が最後に手放す対象であり、あるいは最後まで手放せない対象なのかもしれません。

事業や会社の価値は、規模という一尺で測れるものではないですが、上場企業の社長ですら、ご自身が率先して現場情報を取り続けていた事実が、どういう意味なのかを考えずにはいられません。