当たり前の話ですが、売上は、買ってくれるお客さんがいることで発生します。
ジャンルで言えば、マーケティングとか営業などが該当しますが、少しシンプルに考えたいと思います。
誰に、何が、刺さるのか?
商品やサービスを購入するかどうかを、一言で言えば、その人の心に刺さったかどうかです。
つまり感情が動かなければ、購入することはありません。
- どういう人に刺さったのか、あるいは刺ささりそうか。
- 何が刺さったのか、あるいは刺ささりそうか。
提供する側の問いはこれだけですが、千差万別の人間が相手であるため、難易度が高いと感じるものです。
ある商品の購入を検討する時、その商品の一要素だけで決めるわけではなく、複数要素を総括し、他商品とも比較したり、SNSやレビューなど、他のお客さんの評価なども考慮するのではないでしょうか。
さらに、その人自身の生活や感情など、お客さんの背景と結びつかなければ行動は起こりません。
私も会社員の頃、自分が担当するブランドの顧客、非顧客のリサーチを行うために、自分で考えた仮説から質問文を作り、上司と擦り合わせして、それっぽいレポートは手にしました。
しかし正直、現状を把握することはできても、こんなのもので新しい取り組みを考えるのは、厳しいのではないかと思っていました。
感情が大きな影響を与える購入時の、言葉に乗らない情報は取れませんし、圧倒的に情報量が少なすぎるのです。
対面が最強の理由
色々と試しましたが、どうしたら買ってくれるかを知りたければ、お客さんやお客さんになってくれそうな人に、対面で聞くしかないというのが実感です。
対面は、一度に多くの対象へのアプローチできないものの、回答者の表情や声色、考えながら回答しているのか、直感で回答しているのかなど、情報量が圧倒的に多いものです。
対面というと大袈裟に感じるかもしれませんが、改めてセッティングする必要などありません。
クラウドストレージサービスの「Dropbox」は、通行人にスターバックスのコーヒーをごちそうする代わりに顧客インタビューをしていたそうです。
「Airbnb」の創業者であるジョー・ゲビアも、起業して間もない頃はヘッドセットを付けて歩き回り、ユーザーからの問い合わせに答えたり、サービスについて質問をしていたそうです。
対面で聞いても鵜呑みはダメ
しかしそれでも、教えてもらった内容を鵜呑みにしてはいけません。
もちろん、額面通りに受け取った方がいい場合もあります。例えば、今ある商品・サービスの不満などを洗い出す場合などです。
未だ世にない、新しい商品・サービスを開発することが目的である場合、お客さん自身も「こういう物が欲しいんです」と説明できません。
すでに形となったものを提示されたり、使ったりして始めて、「こういうものが欲しかったんだ」とか、「こういう機能もあると、さらにいいね」などの、感想を発することができます。
つまり、たたき台が必要なのです。
たたき台の理想は、実物に近い見本品ですが、試作品や資料だけの場合もあるでしょう。
では、回答を疑うとしたら、どこを疑ったらいいのでしょうか?
対面で聞いた時の主なバイアスは2点です
- 自分がどう見えるかも意識してしまうため、見栄を張りがちである。
- わざわざ因果関係を明確にして、論理的に説明しようとする。
これらのバイアスを予め折り込んで、回答を聞くことが肝要です。
その上で、①回答の採用、不採用を判断する、②回答内容と回答者の背景を想像する、③矛盾する要素を止揚するなど、このあたりは意志決定者の力量が問われるところです。
数少ない、経営者がやらなければいけないこと
そして最も重要なことは、これらに取り組む中心者は、経営者であるべきだということです。
経営といっても、今はクラウドサービスも発達しており、考え方次第では、大概のことは外注しても会社は運営できます。
しかし従業員が数十人以上の会社を除き、経営者が顧客作りを外注し、能動的に関わらず、自分がリーダーシップを発揮せず、お金で解決して成果が上げた人を、私は見たことがありません。
経営者以外で、顧客に対する最も高い当事者意識、最も熱い情熱、最も深い判断基準を備えている人はいないはずです。
誰のための起業だったのかに立ち返れば、最も重要なテーマであることはご理解いただけるかと思います。