2回目のバイアウト

バイアウト

私の発議から、3人で起業した会社を2回に分けて売却することになります。意思決定に関わることに絞って、お伝えしたいと思います。

バイアウトの意思決定

会社売却や事業売却は、株主総会決議が必要ですが、私達の場合は経営陣3人が、同数の株数、すなわち同じ議決権を持っていました。

話し合いは、事業を推進してきた経営者の取締役会でもあり、株主総会も兼ねているということになりますが、5年以上、苦楽を共にしてきた前者の立場が圧倒的に大きかったと思います。

ビジネス的な基準についてのやり取りは、皆無ではありませんでしたが、3人で起業した目的を中心に、それぞれが考えや思いを語り、何を基準とするのかの暗黙の了解がある中で、結論を出せたことは嬉しく思いました。

その後CEOは、出産に伴い育児にしばらく専念するため、ビジネス活動をしばらく休むことになり、CTOは、動画を扱う会社を起業することになります。

売り手側から見た、買い手候補の判断材料

さて、会社売却・事業売却時の、売り手側から見た、買い手候補の判断材料ですが、主に以下であるかと思います。

  • 売却価格
  • ロックアップ期間 (株式公開後など一定期間株式を売却しない契約を交わす制度が本来の意味ですが、ここでは、経営陣が売却後も残ることを定めた期間という、世間一般でも使われている意味です)
  • 従業員転籍の有無
  • 買い手先の事業シナジー
  • 引き継ぎ方法
  • デューデリジェンスの方法や範囲

ここで重要なのは、何を優先するかです。

私達の優先順位は、上から、①ロックアップ期間、②従業員の転籍、③買い手先の事業シナジー、でした。

経営陣のロックアップ期間

1つ目について、会社売却した場合の経営陣のロックアップ期間は、少なくとも1年半以上が相場のようですが、会社や事業を統括していた人が継続して在籍しますので、売却価格は事業売却より高くなるのが一般的です。

私達の当初の希望は、「会社売却、1ヶ月の引き継ぎのみ、ロックアップ期間があっても3ヶ月以内」で、予想していたとは言え、折り合いは難しく、M&A仲介会社とも協議し、事業売却で進めることになりました。

しかし、統括する人物の転籍がない条件のためか、リスクを嫌い、2事業まとめての事業売却も折り合わず、2回に分けて売却しようということになりました。

事業売却の期間は、売却金額にもよりますが、法務、財務・税務、労務、ITシステム、組織体制などのデューデリジェンスがあり、3ヶ月以内で決着がつくのが一般的のようです。私達の2回の事業売却は、ともに約3ヶ月でした。

会社売却の期間は、特に貸借対照表のデューデリジェンスが加わるためか、6〜12ヶ月が一般的なようですが、私の1回目の会社売却は4ヶ月で契約までこぎつけました。

従業員の転籍の有無

2つ目の従業員の転籍の有無は、個人的には、少なくとも受け入れ用意がある買い手を、選択すべきだと思います。

雇用契約うんぬんの前に、希望を抱いて入社し、頑張ってくれている従業員に対して、自分達の都合により、思ってもいなかった環境変化を迫り、大きなストレスを強いることになります。

売却先に転籍するのか、退職するのか、自分が選択できる環境を用意することは、最低限のデリカシーではないかと思います。

買い手先の事業シナジー

3つ目の、買い手先の事業シナジーについても、慎重に検討する必要があると思います。

先方にとって、買収する事業は新分野への進出の場合が多いようですが、期待値が高いように思われます。

あまりマイナス面を強調し過ぎると、価格にも影響してしまいますが、売却する事業のことを一番良く知っているのは自分達なので、その経験則から活用方法の実現可能性を判断し、売り手候補に含めるかどうかを検討する必要があります。

有利なM&Aの進め方

M&Aの進め方も、大きな意思決定です。

仲介会社を通じて売却意向を出した後、入札期間に、先方からオファーをもらい、売り手側が、1社から3社ぐらいに絞り込みます。

ここから、1社に候補を決め、限定してデューデリジェンスを行うパターンと、2〜3社を候補とし、それぞれ重視する分野が違うデューデリジェンスに対応するパターンが、あります。

後者は、欲しい情報が違う買い手候補の、それぞれの要望に対して対応しなければならないため、重複する部分があるとはいえ、当然、手数はかなり増えます。

私達は2回の事業売却とも、3社同時平行を選択したため、それなりの工数がありましたが、結果的に、相手を牽制しながら交渉を進めるメリットは、大きかったと思います。

2016年の7月に未婚者向けの事業売却を終え、既婚者向けを数ヶ月後に売却する予定でした。

しかし、2016年12月にキュレーションサイト問題が発生し、1次情報メディアである当社サイトも含め、業界全体への不信感から、既婚者向け事業を売却できたのは、翌2017年の8月となってしまうのです。