2回目の起業

会議 起業

私は、充電期間を経て、元タレントの女性とその弟の3人で、2回目の起業をします。

2回目の起業のきっかけ

元タレントの女性とは、その2年ほど前に、どなたかの誕生日会で知り合い、その後偶然、街中で会ったぐらいでした。

彼女は、会場を縦横無尽に走り、知り合いに、別の知り合いを紹介している姿が印象的で、人脈が広いんだろうなと思いました。

私が友人の起業相談に乗っていることを聞き、起業の相談をしたいとのことで、連絡をもらいました。

彼女はメディアを中心とした広い人脈を活用して、男女の出会いをお膳立てするビジネスをしたい。

弟は、留学中にアメリカのインターネットビジネスの状況を見て、男女のお膳立てを支援するインターネットサービスを開発したいとのことでした。

不安に思っていることや、進め方について、私から一通りアドバイスが終わり、最後の雑談となったとき、彼女の口から、事業を通じて未婚化・少子化という社会課題に貢献したい、という言葉を聞き、その日は終了しました。

未婚化・少子化という社会課題

未婚化・少子化については、言葉を聞いたことがある程度で他人事でしたが、少し気になったので、関連する内容を調べてみました。

すると、日本は深刻な事態にすでになっており、将来に渡って悪化し続けることも分かりました。

第1次ベビーブーム世代が親となり、その子供世代も出生数が多く、第2次ベビーブームと呼ばれましたが、その子供世代で起こるはずの、第3次ベビーブームは起きませんでした。

これに加え、寿命が伸びたことにより、高齢者比率が加速度的に上昇したため、人口ピラミッドは、上幅が広い逆ピラミッドにどんどん変形し続けています。ここまでは、多くの方が認知していることだと思います。

どういった商品が売れるかや、消費者ニーズなどの変化は、予測が難しいですが、人口は、データからの将来予測が明確な事に加え、例えば、人口が1億人を切るリードタイムも明らか、という特徴があります。

日常生活に大きな影響を与えている

人口に基づく未来予想は確実性が高い上、少子化が及ぼす影響は、すでに姿を表しつつありました。

例えば、生活に欠かせない水道の、水道管破裂を含めた断水などのトラブルは、全国で年間3万件弱あり、道路の陥没や周辺の住宅の浸水などを引き起こしています。

しかし、多くの自治体は、原因である水道管の老朽化を把握していながらも、人口が減り、税収が落ち込み、修繕する費用が追いつかず後手に回っています。

東京都心の多くの水道管も、使用から50年に迫り、耐用年数40年を超える地点が急増していますが、本格的な着手に至っていません。

小学校や中学校の廃校は、地方のみならず都市部でも進んでいます。

学校がなくなった街からは若い世代がいなくなり、シャッター通りとなり、不便な街からは人通りがなくなるため、治安が悪化していきます。

さらに、警察官や自衛隊員、消防士といった、若者を必要とする仕事の人員確保も、欠員が出ています。

全国に1,000万戸以上あるとされる空き家は、地方都市で起こっている印象が強いですが、都心部にも点在し、ゴミ捨て場となったり、なかには不審火で火災が発生し、近隣に被害が拡大するケー スも起きています。そして、15年後には、空き家は2,000戸以上になるという、シンクタンクの予想もあります。

このように、あたり前だと思っている、安心・安全を脅かす深刻な事態が、私達の普通の暮らしの中に次々と現れていますが、この原因の少子化が占める割合は、決して少なくありません。

行政はどう対応してきたか

これまで誰も気付かず、何も手を打たなかったのかというと、決してそうではありませんでした。

1992年の『国民生活白書』では 「少子社会」という言葉が初めて取り上げられましたが、その対策は、現在の少子化対策と瓜二つです。

「少子社会」の背景は、若者の結婚観の変化、女性の職場進出と家族のあり方の変化、子供の教育の問題、住宅をはじめ居住環境の立ち遅れ、と述べられています。

また、出生率の低下を止めるために、女性が仕事と出産・育児を両立しやすくするための制度の整備、および家庭内における男女の役割分担の意識の変革が必要、と結んでいます。

国は、25年以上も前に、現状から課題を抽出していたことがわかります。

その後は、様々な要因が組み合わさって、さらに悪化していく訳ですが、対策だけに限定すれば、行政の予算配分において、選挙の票田のために高齢者を優遇してきた政治的な意思決定が、状況の悪化を助長してしまった、とだけ申し上げたいと思います。

また私は、女性市場で、女性と一緒に仕事をする機会が多かったこともあり、未婚化・少子化を放っておくことができないなと、思うようになりました。

多くの女性と仕事してきた経験からの問題意識

化粧品会社の営業職だった社会人1年目、担当していた3歳ぐらい年上の美容部員さんは、これまで遅刻や欠勤がなかったものの、妊娠でつわり症状がひどくなり、出勤日の朝、「今日は仕事に行けそうにない。」と電話が入り、私は、入店予定の取引先にお詫びに行くことになりました。

自分のことしか考えていなかった私は、体は辛いんだろうとは思いながらも、「怒られるのはオレなんだけどな〜」とか、「薬飲んだら出勤できるんじゃないの〜」などと、思ったりしました。

入店予定だった店舗の女性店長に、私はたびたび叱られていたので、嫌だなと思いながら、店舗の開店時間に行って事情を説明すると、「それはしょうがないわよ、分かりました。私がお宅の商品売るから大丈夫よ!」とだけ言われました。

彼女の普段の仕事振りから、信頼があったのかもしれないですが、売上に影響を与えるはずなのに全く怒っておらず、私は、「面倒なことにならず、良かった。良かった。」と思うだけでした。

また、別の美容部員さんからは、「子供が熱を出して、保育園で預かってもらえないから、休ませてください。」と連絡がありました。

ベテランの方だったので、私に営業の仕事について色々と教えてくれたり、私の失敗をカバーしてくれたり、大変にお世話になっていました。

私は保育園の背景や制度も分からず、嫌々、「またオレがお詫びに行くのか〜」と思いながら、店頭に足を運びましたが、その店の女性担当者も呆気なく了承してくれました。

起業してからも、女性向けの商品を扱っていたこともあり、女性の雇用比率は8割以上でしたが、先ほどと同様なことがあると、愚痴一つ言わず、休んだ従業員の仕事を皆んなでカバーしてくれていました。

また、ある女性従業員は実力もあり、大変に貢献してくれていたのですが、妊娠・出産を機に、退職することになりました。

他に子供がいる従業員もいなかったため、産休や育休を取れる雰囲気がないばかりか、その制度すらありませんでした。そういった事に配慮できなかった私の責任だったのです。

普段は決して仲良さそうに見えない女性同士でも、なぜ支え合おうとするのか。

出産・育児という、女性が身体的にも精神的にも不利な状況になったとき、日本の固定的な家庭観や母親像、制度の惰弱性が、社会との接点を奪ってしまうことがあります。

一人の人間としての実存に関わる問題ですが、女性がそういった理不尽や非合理性に晒される状況は、今も続いています。

同じ女性として、そういう状況にいる時は、せめて力になりたい。そういう想いだったんだと、後々気付くようになります。

未婚化・少子化に登場するデータを改善したい訳ではなく、こういった現場の声を聞き、その声に対して解決策を渡していきたい、と思うようになりました。

その上で、未婚化・少子化と呼ばれる状況を、自分たちが生きている時代の改善すべき課題であると捉えるようになり、その問題意識をもともと保持しているメンバーであればやっていけるだろうし、一緒にやる価値があると結論づけました。

経営チームは、結果的に最適な組み合わせだった

こうして、2010年に、元タレントの女性とその弟の3人で起業することになります。渋谷の繁華街にある、築30年以上のビルテナントのシェアオフィスで活動がスタートしました。

事業としての広がりは、恋愛・婚活市場はマッチングや占い、結婚市場は式場・ギフト選び、妊活市場は健康食品、育児市場は幼児教育・知育、キラキラママ市場はファッション・美容・インテリアなど、漠然とイメージを持ちつつ、まず始めた事業は、当初から案に上がっていた、インターネットで結婚を前提とした出会いサービス、すなわち恋愛・婚活市場でした。

複数人で株式会社を作る際、親族同士でもそうですが、特に友人など、他人と一緒に作る場合、持ち株比率には注意を払わなければなりません。

また最近では、株式と引き換えに、ベンチャーキャピタルからの投資も得やすい環境になっています。

計画通りに事業が運ばず、ベンチャーキャピタルと揉めるぐらいならまだしも、人生が固定されてしまい、後悔している方を何人も知っていますので、所有権を共有するということを、慎重に考える必要があります。

私達も、のちに数社のベンチャーキャピタルと定期的にお会いするようになりますが、最後まで第三者割当増資は実施しませんでしたので、持ち株比率が変わることはありませんでした。

また、役割によって相場感があるんだろうとも思いましたが、公平性が納得感につながるという考え方のもと、3人が同株数の株主構成でスタートしました。

起業チームの役割分担は、将来を外部に向かって語る起業家タイプ、現場で手を動かす職人タイプ、全体を統制するマネージャータイプの組み合わせが、最適だと言われていますが、3人のそれまでのキャリアや性格が、この通りにフィットし、適切なメンバー構成でスタートすることができました。

ところが私達は、1年経っても目立った成果をあげられませんでした。