制約が独自性を生む

壁 自己実現

制約条件にまみれた中で、結果を出す人には、心惹かれるものです。

マラソンランナーの川内優輝さんは、埼玉県庁にフルタイムで勤務し、多くの練習時間を確保できないにも関わらず、日本代表として数々のレースに出場し、2018年のボストンマラソンでは日本人で31年ぶりの優勝を果たしました。

デビュー当時は無名で特徴もなかったAKBは、秋葉原のAKB48劇場で「会いに行けるアイドル」として、毎日のように公演のビラ配りをしていましたが、観客が数人の時代が長く続きました。

彼女たちのファンは、メンバーの頑張りや苦悩に感情移入して、自分達が育てているという意識で、メンバーの成長を後押ししてきました。

ドイツの音楽家ベートーヴェンは、20歳代後半で難聴、40歳頃には全く聴こえなくなり、音楽家として聴覚を失うという死にも等しい絶望感から、自殺も考えました。

しかし、彼自身の音楽への強い情熱で苦悩を乗り越え、再び生きる意欲を得て、自分の来し方を反映するかのように、人生を鼓舞する強音や、すすり泣くような弱音は数多くの作品の特徴となり、名を残す偉人となりました。

経営陣が高学歴で、力強い人的ネットワークを持ち、その中のベンチャーキャピタルから巨額の資金調達を果たすような起業は、誰もができる訳ではないですし、大変に素晴らしいことです。

しかし、そうでない起業が圧倒的に多いですし、様々な制約条件があっても、成果を出されている経営者は多数いらっしゃいます。

商品・サービスに限定すれば、クオリティ、価格、提供スピードのどれか、もしくは複数の、一般的な尺度でいう欠損があるからこそ、特徴がでるものです。

すなわち、劣っている部分をカバーする秀でた部分の強化、という考え方からアンバランスとなり、独自の商品やサービスとなります。

上記で紹介した、川内優輝さん、AKB、ベートーヴェンは、制約条件や欠落している部分こそが、全体の特徴に大きく影響し、独自の存在感を放っています。

真に称賛できる人物とは、逆境に直面したときに、自分の生き方を貫ける人間なのだ

(『ベートーヴェンの生涯』ロマン・ロラン 著、片山 敏彦 訳、岩波文庫)