社会人の学習

本を読む 自己実現

先日、有名な女性詩人の方が開催する、初心者向けの「詩を作る教室」に参加しました。

恐らく最後に「詩」というものに触れたのは、中学生の時だったのではないかというぐらい、全く縁がない世界で、嫁に講座のことを話したら「この人どうしちゃったの?」という顔をしていました。。

講座の様子

参加者は、大学生の女性から65歳の男性まで老若男女18名です。

最初に自己紹介タイムがあったのですが、30年間欠かさず、詩の「1日1作」を実行されている方、曲の作詞をしている方、他の詩人の弟子で、内緒で来た方など、これまでに出会ったことのない層との出会いに刺激を受けました。

先生は詩集を10冊以上出版され、業界では有名なプロの詩人ですが、先生が詩を読む声は、感情の入れ方が強くも弱くもなく、それでいて豊穣な響きをまとっていました。

また、ビジネス系のセミナーでは、自分が商売をやっていなくても、なぜか商売している人に、商売を教えていることもありますが、人に詩を教えるのは、詩人として活動している人じゃないと厳しいだろうなと、素人ながらに感じた次第です。

詩の講座に行こうと思った理由

ところで、そもそもなぜ詩を学ぼうと思ったのか。

ビジネスでは、言葉は他の人に情報を受け渡すために使用されるのが目的で、頭で考えた論理を、効率的に言葉によって伝える「伝達の言葉」である場合がほとんどです。

一方、どなたかの発言かは覚えていないのですが、「詩は、頭ではなく体を通して出てきた言葉なので、より読んでいる人の心に寄り添うことができる「表現の言葉」である」という発言に触発され、いつか学んでみたいと思いながら、長い年月が経っていました。

出版社で編集長をしている友人と、久しぶりに会食した時に相談したら、それなら詩集を読んだ方がいいと言われ、歴代支持されてきた詩をセレクトした「ベスト盤」の詩集を買いました。

あたり前なのですが、流石というか、使う単語であったり、感情を表現するための比喩であったり、描写など、表現の独自性と教えや感情の普遍性が両立し、ど素人の私でも特異なオーラを感じました。

やがて、眺めるだけでなく、何かを記す場面で「表現の言葉」を使いこなせるようなりたい。そう思ったのが、詩の講座に申し込んだ理由です。

学校教育と社会人の学習

さて、私の場合は社会に出てから、中学生の時には抱かなかったはずの詩への所感が、詩を学ぶ動機となった訳ですが、他ジャンルにおいても、能動的かつ意欲的に学びたいという欲求が、切れ目なく湧いてきます。

また、学生時代は勉強が嫌いで、社会人になってからは、学習に意欲的になったという声を時折、耳にします。

これは、学校教育と社会人の学習では、発信側と受信側やその関係性が、構造的に異なるためですね。

学校教育の特徴

学校教育の発信側である先生は、誤解を恐れず申し上げるならば、その道のプロではなく、所轄省庁の方針に則って教えるプロです。

その内容は、決まった学科範囲の中で、あらゆる観点から正確さが検討され、正解が必ずある、知識や思考方法です。

学校教育の受信側である多くの学生の帰結点として、大学受験があるわけですが、明確に将来の目標を持っている人は、例えば、医学部だけを目指すなど、明らかに専門性が高い職業に直結した、大学や学部を目指されます。

最近では、目的が明確になっている人ほど、大学は時間の無駄だからと、敢えて目指さないともお聞きします。

大半の人は、将来やりたい事が明確になっておらず、人によっては全く考えておらず、モラトリアムの口実として大学進学を選択したのではないでしょうか。

かつては、出身大学というブランドに大きなメリットが付加されていたのは、周知の通りです (もちろん今でも一部の世界では、まだ一定の効果がありますね)。

そのような効果を期待してか、まずは受験という仮目標があるとはいえ、将来イメージがない中で時間を投下して勉強するというのは、考えてみるとかなり無理がありますよね。

サイドブレーキが掛かった状態で、アクセルを踏むという、 受動的でありながら、積極性を発揮せざるを得ない状況です。

社会人の学習の特徴

一方で、社会人の学びにおける、発信側である先生は、知識や論だけでなく、実践者としての経験が提供価値に大きく影響するため、その道のプロであることが大きなアドバンテージになります。

社会のあらゆる活動が対象となるため、詩のプロもいれば、マーケティングのプロもいるし、ネイルのプロもいるでしょう。

社会人で学ぼうとする受信側の方は、今日の生活や今月の給料には影響しないにも関わらず、また仕事や生活などで忙しいにも関わらず、遊んだり休んだりする誘惑を断ち切り、わざわざ時間を確保される方が大半です。

自分の人生、生活、仕事などを、より良く変えたいと思っており、当事者意識が強く、非常に能動的な方々です。

そのような方々には、元プロ野球選手の松井秀喜さんも座右の銘としていた、ウィリアム・ジェームズの言葉が参考なります。

心が変われば行動が変わる。

行動が変われば習慣が変わる。

習慣が変われば人格が変わる。

人格が変われば運命が変わる。

運命が変われば人生が変わる。

学習と共に重要なこと

学習に励む前に、どんな存在になりたいのか、何を達成したいのか、どういう生活をしたいのかなど、この格言でいうところの「心」に当たる部分を曖昧とせず、明確な言葉として持っているかどうかが、最も重要なポイントです。

つまり、社会人の学習は、受信側の意識や目線の高さによって、意味が置換され、享受する効果が異なるという特徴があります。

この辺りを念頭において、まさに上記格言の「行動」に大きな影響を与える日々の学習に励み、この因果関係を成り立たせて行きたいですね。自戒を込めて。