組織成立の条件は、ビジネスも育児も変わらない

手つなぎ マネジメント

出産・育児に関連して、少子化、待機児童問題など、しばしばメディアでも取り上げられますが、特に育児は、ビジネスに通ずるところが多いなと感じます。

出産・育児という、女性が身体的にも精神的にも不利な状況になったとき、日本の固定的な家庭観や母親像、制度の惰弱性が、社会との接点を奪ってしまうことがあります。

いわゆる「ワンオペ育児」(飲食店などの店舗を1人で回している状態である、ワンオペレーションの略がワンオペで、母親が1人で育児を回している状態)が普通だった一昔前とは異なり、共働きが一般的になったこともあり、育児を分担する育児シェアやイクメンなどの考え方が浸透しつつあります。

私には1才半の娘がおりますが、嫁も自営業であるため、可能な限り公平な負担を念頭に、情報を収集しながら試行錯誤していますが、一筋縄では行かないなというのが、正直なところです。

共働きの育児は、実行を支える体制確立が肝要

とはいえ、経営と類似点が多いためか、マネジメントの視点を導入して上手く行った部分もありますし、そういった声を見聞きしますが、ビジネスのケーススタディとして捉えることもできそうです。

時間的制約にある共働きの育児・家事は、育児・家事の実行に加え、育児・家事体制の確立と維持が必要です。

大まかな実行内容は、おむつや食事などの「子供のお世話」、屋内や屋外で「子供と遊ぶこと」、買い物、食事、洗濯、掃除などの「家事」の3つです。

こう書くと簡単に思えるのですが、それぞれが切れ目なく、同時進行で発生し、終わりがない、という特徴があります。

このため、円滑に運営していくためには、実行の前に体制の確立と維持が必要なのです。

1  役割分担と定期的な話し合い

その1つ目は、母親と父親それぞれの得意・不得意分野を十分、考慮に入れた役割分担を考え、その定期的な見直しも、子供の成長に応じて合議することです。

家事は、物に対する活動や働き掛けであるため定型業務と言えるでしょう。

育児は、感情コントロールが効きづらく、予測し難い行動をとりがちな子供へのサービス提供であるため、パターンがあるとはいえ、非定型業務と言えるでしょう。

私の家庭の場合、ざっくり言えば、非定型である育児のフロントは母親、ほぼ定型業務である育児のバックヤード(子供の食事の用意などが一例です)は私で、定型業務である家事は私、と役割を分担することで円滑に回っています。

当初は、私もやる気が先行し、フロントを買って出ていたのですが、父親がやったのでは、スピードが遅いし、サービス提供先である子供は、母親への愛着が強く、満足度も母親に劣っていたようです。。

2  タイムリーな情報共有

2つ目は、子供の様子や体調、スケジュールなどについてタイムリーな情報共有を行うことです。

特に、健康面は自ら意思を発することができませんし、親も素人であるため、2人で確認して、迅速に対応するよう心掛けています。

スケジュールについても、子供を連れて出掛けるのは、大人だけで出掛けるのに比べ、準備に時間が倍近く掛かりますので、前後のスケジュールを考慮しながら、 タイムマネジメントを行っています。

3  外部関係者とのコミュニケーション

3つ目は、家庭内はもちろん、保育園や育児支援サービス提供者と関係性を作り、常に丁寧なコミュニケーションを行うことです。

ビジネスのプロジェクトリーダーであれば、リソースが足りない場合、調達して手当する必要がありますが、社内リソースを確保するのか、費用を払って外注するかを決定します。

同様に、育児では家族以外に、保育園、ファミリーサポート、病児保育、ベビーシッター、家事代行など、登場人物が様々です。

引き継ぎを含め、コミュニケーションが非常に大事ですが、そもそも自分の子供をお任せできる感謝の気持ちもあり、日頃からの人間関係構築が非常に重要だなと感じています。

組織が成立する3要素

以上は、経営学者のバーナードが提唱した「組織が成立する3要素」である、組織の「共通目的」を持つこと、お互いに協力し合う「貢献意欲」、関係を維持する「コミュニケーション」そのものです。

育児と同様、仕事も全て一人でやろうとすることは、業務のブラックボックスを作ってしまい、その人しか対応できない属人的なものになるだけでなく、オーバーワークかどうかの判断が難しいため、周囲のサポートを得づらいばかりか、別の人が育たないということになりがちです。

一方で、二人以上で何かを行おうとする時は、モチベーションの高低差、対象への理解度の高低差、コミュニケーションそのものの工数、などが課題となります。

それらを埋めるために、共通目的、貢献意欲、コミュニケーションの「組織の三要素」視点を持つと楽になります。

例えば、業務の標準化や見える化は、組織を円滑に回す一つの方策ですが、目的をすり合わせし、マニュアルを作って最適なやり方を教え合うなどの、コミュニケーションの場面が必ず発生します。

第二領域の活動である

その時、マニュアルを作る暇があったら、今ある仕事で成果を出さなきゃという焦りもあるでしょうし、人に伝えるとか、共有するというのは先々を見据えた行動であり、時間の余裕がない中では、どうしても後回しになってしまいます。

しかし、考えを擦り合わせし、マニュアルを作って標準化、見える化するという、第二領域の活動を優先的に着手し、それを元に定期的に話し合っていると、仕事も育児も本当に楽になります。

私の家庭でも、定期的な話し合いの他に、離乳食のマニュアルを Google ドライブで共有し、Google カレンダーでスケジュールを共有し、チャットツールでリアルタイムに連絡を取りあいますが、一事業を運営している感覚です。

自分が無理なく、質を落とさず、着実に進められる構造を周りを巻き込んで作る、というマネージメント思考ができるかどうかで、仕事や育児の品質や、運営のしやすさが変わるのではないでしょうか

エチオピアのことわざに、「足が2本あるといっても2本の木には登れない。」というのがあります。

もちろん初動の瞬発力も必要ですが、ある程度軌道に乗ったら、実行ばかりに前のめりにならず、手順ややり方を定めた方が、より良い結果になることが多いようです。

嫁が言っていましたが、育児には終わりがないとはいえ、全体像が見えることで、その都度考えるという場面が減り、着手が早まるためにタスクも順調に減り、安心して生活できるようになったとのことでした。

まして、私達のビジネスについても、当てはまりそうですね。