3回目のバイアウト

握手 バイアウト

2016年の7月に未婚者向けの事業売却を終え、既婚者向けを数ヶ月後に売却する予定でしたが、12月にキュレーションサイト問題が報道され、1次情報メディアである当社サイトも含め、業界全体への不信感から、一旦、売却に向けた取り組みを止めざるを得ませんでした。

キュレーションサイト問題で事業売却を延期

なんでこのタイミングなんだと、大変に悔やまれましたが、結果的に、希望に近い形で売却できたのは、過去の意思決定が影響していました。

キュレーションサイトの大型M&Aが話題となり、私達も、類似サイトの開発を検討しましたが、サービスの責任者であるCTOは、断固反対でした。

彼は、法的にも、倫理的にも、全てが黒に近いグレーであり、いつ、どういった形かは分からないけど、必ず審判を受ける日が来ると主張していましたが、それが現実となったのです。

問題点は、大きく2点でした。

1つ目は、PV(トラフィック数)をかさ上げしていた点です。

広告主によって判断基準は分かれるものの、サイトの PV を見て出稿を決める広告主は少なくありませんでした。

キュレーションサイトは、閲覧しているユーザーが、記事も執筆できる構造になっているのが特徴です。すなわち、ユーザーが記事を執筆しているときもPV はカウントされるため、ユーザー数がそれほど多くなくても、 PV は多く見せることができます。

さらに、純粋にユーザーが執筆した記事のみで成り立っているサイトであれば、まだ良い方で、社内の人間が複数アカウントを駆使して、ユーザーに成りすまし、PV数を多く見せていました。

もう1つは、法的観点からNGだった点です。

発端となった医療系キュレーションサイトを例に挙げると、①内容虚偽、②著作権法違反、③薬機法違反、④一般不法行為(民法709条)の4点が問題でしたが、実際の記事例によって説明します。

有名になった「肩こりの原因は幽霊」の記事は、問題外の内容ですが、記事や画像も、オリジナルか許諾を得たものであれば、著作権侵害にはなりません。

特定の商品(例えば、魔除け水晶玉)の医学的な効能効果を標榜していなければ、薬機法上も問題にはなりません。

それに、記事を読んだ人がその内容を信じたからといって、具体的な損害が生じるとも思えません。

しかし、「●●という商品を飲めばがんが治ります!」などと、他者が作成した嘘の記事をコピペし、画像も無断使用して、特定商品の効能効果を訴求し、それを信じた人が標準治療を拒否して●●という商品だけを飲んだ結果、がんで死去した、

というようなケースの場合は、「内容虚偽+著作権侵害+薬機法上違法+記事によって生じた結果について賠償責任を負う可能性あり」となります。

騒動によって、その狡猾な手法や法令違反が白日のもとに晒され、運営会社の全キュレーションサイトが閉鎖に追い込まれました。

M&Aが終了していた、別のキュレーションサイト運営会社では、損害賠償や補償問題などの係争に発展したところもあるようです。

たまたま、その渦中の業界で事業をしていましたが、社会に対して正しい姿勢で臨むことの大切さを、改めて目の当たりにしました。

満足のいく形で3回目の事業売却が完了

さて、私達は、年末年始を挟んだM&Aを避けるため、年明けからスタートする予定でいましたが、騒動が落ち着くまでは、売りに出さないのが賢明だと考えます。

また、売りに出しても、先方の判断基準は厳しくならざるを得ないことを覚悟していました。

ところが、思わぬ恩恵にあずかることになります。

多くのキュレーションサイトが閉鎖したり、グーグルの検索アルゴリズムが、騒動を受けて大幅に変更されたため、私達のサイトの検索順位が、様々なキーワードで向上していました。

また、キュレーションサイトに出稿しようとしていた広告主は、出稿場所を失ったため、信頼できる1次情報メディアへの出稿意向が強くなり、断らざるを得ないぐらい、お声掛けを頂くようになります。

様々な騒ぎが収まり、6月に改めて売りに出し、満足のいく形で滞りなく2017年8月に売却が完了しました。

未婚化・少子化課題の改善を目的に設立され、7年間運営してきた会社は役割を終え、実質的に幕を閉じました。