経営理念、ミッション、ビジョンの作り方

ビジョン 目標

最近、ミッションや経営理念に関するご相談を多く頂きます。

経済性と同じぐらい社会性に重点が置く経営者が増えていくことで、社会はより良くなりますので、基本をお伝えしたいと思います。

経営理念、ミッション、ビジョンの関係性

具体的な相談内容は、「ミッションや経営理念をどう作ったらいいのか分からない」、「作ってみたけど、これでいいのかが分からない」、「前からあるけど、しっくりきていない」、のどれかに当てはまります。

関連するキーワードを、整理します。

経営理念は「社会に対する根本的な考え」を表したもの、ミッションは「社会で実現したいこと」を表したもの、ビジョンは「ミッションが実現した時の状態」を表したものです。

すなわち、経営理念は想いであり、ミッションは行動であり、ビジョンはその結果を表しています。この関係性が理解できれば、意外と簡単に作れるのではないでしょうか。

この関係性の理解を助ける、実話があります。

1860年代のアメリカで、ある町の薬局にいつもはお母さんと一緒にやってくる小さな女の子が、その日は一人でやってきました。

手にしたわずかなお金を差し出し、「ミラクルちょうだい」と言いました。

もちろんそんな名前の薬はなく、意図はわからなかったのですが、小さな女の子一人の帰り道が心配になった薬局の店主は、近所のその子の家まで送ってあげました。

店主は、自宅のベッドに横たわるお母さんとその夫、そして医者がいる光景を目にします。医師は、重い病に冒された母の病状を夫へ伝えるため、女の子に外で待つように言いました。

しかし、どうしてもその話が気になった女の子は、扉に耳を押し当てて、必死に声を聞き取ろうとしたときに聞こえたのが、医師の「ミラクル(奇跡)だけが頼りだ」との言葉でした。

馴染みの薬局に行けば、「ミラクル」が手に入ると少女は思いましたが、店主は女の子のお母さんを助けることはできませんでした。

この出来事をきっかけとして、店主は薬をつくる事業を始めます。薬を売る仕事から薬を作る仕事に転身しました。

その店主の名はイーライ・リリーといい、1920年代にはじめてインスリンの実用化に成功し、現在、売上高世界9位のイーライリリー・アンド・カンパニーというアメリカの大手製薬会社の創業者です。

同社は、「この世から不治の病をなくしたい」という想いがあって、「万病を治す薬をつくる」という行動が生まれ、「家族が病で亡くなることのない世界」という結果を描いています。

先ほど述べた通り、経営理念は想い、ミッションは行動、ビジョンは結果を表明したものです。

内面から湧き上がる「想い」があり、具体的な挑戦と献身的な「行動」があり、その先に「理想的な結果」を描くことで、企業や事業の存在意義が明確になります。

実際に作ってみる

実際に文字に落としていく際は、経営理念から出発するのが良いかと思います。

社会や生活全般、日頃の仕事などに対して、私達は「こうしたら良くなるのに」とか、「こうしたら喜んでもらえるのに」とか、「こうしたらもっと幸せになれるのに」と、前向きな感想を持つことがありますが、ふと思っただけの事や、一瞬で頭から消えてしまうものが大半でしょう。

しかし、何度も思ったり、強く思ったり、何かに書き留めたりしていると、徐々に確信を深め、自分の考えやアイデアを深めようとする回路が形成され、他人に話して意見を聞いてみたり、関連する専門情報を調べたりする中で、さらに確信が深まり、回路が強化され、その人独自の哲学や理念として昇華されるのではないでしょうか。

つまり、内面から自然派生的に生まれた理念を明確にできれば、それに対して自分や自社が貢献したい行動をミッションとして定義することができ、ミッションをやり切った理想の世界であるビジョンを描くことができます。

ですから、肩肘を張って新たに考えるというよりは、すでに想っていることを整理し、どういう言葉だと伝わりやすいのかという、伝え方を考える作業のはずです。

マーケティングとの関係も意識する

また、ここで密接に絡みあう概念は、働き掛けたい相手、すなわち「顧客」です。

経営理念、ミッション、ビジョンは、セットで自社の最上位概念として扱いますが、それらは、「考えの表明と決意」です。

そして、あくまで企業の1機能であるマーケティングは、考えや決意を成し遂げるための「具体的な解決策」です。

解決策ですから、実際に触れてみた受け手の感想や満足感があります。

「ここはよかった」、「もう少しこうだったらいいのに」というフィードバックをもらい、解決策を修正することで、ファンが増えていきます。

つまり、見ている先は「顧客」という点で共通していますが、経営理念、ミッション、ビジョンは、自社の意志を変えない限り、変わりようがないのに対し、マーケティングは変わり続ける必要があります。

言い換えると、自分の「こうします」を表明としたものが、経営理念、ミッション、ビジョンで、他者の「こうしてほしい」に応えるのが、マーケティングです。

以上のように捉えると、うまくまとめられるのではないでしょうか。