会社や事業は1つの生命体

地球 バイアウト

会社を売却したいと思う社長個人の理由は、年配の経営者の事業承継、20代から40代ぐらいの経営者のセミリタイヤやキャリアチェンジに大きく分かれます。

もちろんこれに、個人的な理由や事業自体の事情が絡んでくるため、千差万別であるとも言えます。

生命体として捉える考え方

そんな中、事業そのものを生命体として捉えた場合に、自分の手を離れることが賢明であると判断し、会社を売却されたいという社長がいらっしゃいました。

宇宙を意識するとき、「地球全体」を一つの生命体として捉える考え方がありますよね。

地球上に存在する生物は多種多様で、相互に影響し合いながら最適化され、人間もその一員にすぎません。

全体を生命体として捉えるとは、個々の生命体の多様性を認め、尊厳を認めることですが、特に近代以降は、人間が生物の王者であるかのように振舞い、他の生物を駆逐してきた結果、地球環境や生態系を壊し、人間自体が自然の脅威にされされています。

また、性別、人種や民族、地域、信仰などの多様性を内在する「人間社会」を、一つの生命体として捉える考え方もあります。

その多様性を許容しなければ、人間対人間の構図が生まれ、差別や戦争に発展してしまうことは、古今東西の歴史が証明しています。

「地球全体」も「人間社会」も、1つの生命体として捉えることで、その中にいる主体の多様性や尊厳を意識します。

現代は、その対比である人間の貪欲や傲慢を因とした不寛容が、環境破壊、戦争や差別、経済格差などの根源になっているようです。

事業は1つの生命体

さて、ビジネスは人間社会のごく一部の営みですが、その大まかな構成要素は「事業そのもの」とそこに関わる「登場人物」です。

代表的な登場人物は「顧客」、「従業員」、「取引先」などですが、事業そのものが途絶えてしまえば、その人たちに迷惑が掛かります。

例えば「顧客」への貢献は、その人にとってより良い価値提供を継続することです。

将来を見据えた時、自身が担っていても、それが叶わないという判断であれば、実現可能な他者に任せ、事業自体の継続や発展を見守った方が良い場合があります。

社長と言っても、大海の中で小舟を操る船主のようなもので、自らも漕ぎつつ、船と海との関係を客観的に見ながら、主観的に意思決定を下し、部下に号令を出さなければならない存在です。

ふと顔を上げると、自分と同じような無数の船主を目にし、大きい世界の一員にすぎないことを改めて認識します。

同時に「この生物(事業)は、自分がいるから成り立っている」と思っていたものの、いつのまにか独り立ちしていることに気付く瞬間があります。

自身の必要性や影響力が減少する代わりに、社員を始めとした他の登場人物の働き掛けや活動によって、事業は拡大している。

こんなふうに捉えれば、事業を自分の手元から解き放ち、新たな環境を用意した方が良いと考えるのも無理はありません。

自然の摂理に則る

資本論理がベースとなる会社売却や事業売却において、綺麗事に聞こえるかもしれませんが、その事業を「愛するが故の行動」という世界観は存在すると思います。

逆に、自然の摂理に抗えばどうなるか?

地球規模であれば環境破壊、人間同士であれば戦争や差別などの歪みに繋がっていることは、改めて申し上げるまでもありません。

ですから、自身の事業を一つの生命体として意識したとき、異なる環境に植え替えることが、自然の摂理に則っている場合があるものです。

社長個人に人格や人生があるように、会社や事業にも人格や人生に類するものがあるのではないでしょうか。