学びの方法を整理する

すし 自己実現

学生時代には全く予想していませんでしたが、社会人になっても勉強し続けるのが、一般的な世の中になりました。

しかし、書籍やセミナーなどでいくら学んでも、成果が出ない、あるいは効果があったかどうかわからない、ということをよくお聞きします。

学びの要素を整理する

学校教育での学習は、極論ですが、学習の順番が決まっていて、どこから手をつけるのかが明確であり、必ず正解があるため、その通り実行すれば結果が出るようになっています。

これは、社内の定型業務も同様ですが、やる事(タスク)それぞれに、やり方(マニュアル)があり、本人が身につけた事(身体知としてのスキル)があって、点数(アウトプット)が決まります。

一方で、寿司屋に弟子入りした場合(一昔前の偏った光景ですが。。)、最初は洗い物やゴミ出しを命じられ、お客さんに出す寿司は「背中を見て盗め」 のような職人気質の世界です。

弟子が一人前になろうとしたら、師匠が握って盛り付けた寿司を見るのと同時に、世界観を掴むことがスタートです。そして、どう握ったら師匠と同じレベルの寿司になるのか、体の使い方などを観察し、それが可能となる動作の手順を考え、自分で言語化してやる事を整理する、といった感じではないでしょうか。

それぞれの段階は、以下のように整理できます。

  1. 何をやるのか、全てを言語にできるのは、「タスク」です。
  2. どうやるのか、全てを言語にできるのは、「マニュアル」です。
  3. どうやるのか、全てを言語にできないのは、「身体知としてのスキル」です(仮に言語化したら情報量が多すぎますし、 非言語作用も含むため)。
  4. 何をやるのか、全てを言語にできないのは、「アウトプット」です(仮に言語化したら情報量が多すぎますし、 非言語作用も含むため)。

上記の例ですと、学校教育は、タスク→マニュアル→身体知としてのスキル→アウトプットの順番です。

寿司屋の修行は、逆回りの、アウトプット→身体知としてのスキル→マニュアル→タスクの順番となります。

対象によって違う学びの順番

若い優秀なビジネスマンの方と接していて、時折感じるのですが、タスクやマニュアルなど、目に見える対象を殊更に重視される傾向があります。

もちろんそれは重要なことなのですが、言語化できない対象ついては、関心が低く、知ろうともしない行動をお見受けすることがあります。

逆に、職人の世界では、「背中を見て盗め」のような属人的で、曖昧で、非効率な育て方であるため、若い弟子が辞めてしまうというのも、昔から耳にする話です。

どちらが良い悪いではありません。
どちらも必要不可欠で、行ったり来たりすることが肝要なのです。

「言語にできるもの」、「言語にできないもの」という極を定めると、軸ができます。軸の上を行き来することで、つまり視点を変え続けるこ とで、輪郭があらわになります。

私の場合でいうと、自社の新人育成と、コンサルティングの相手では、アプローチが変わります。

自社の新人育成については、因果関係がわかる文章化したタスクやマニュアルをベースに先輩社員が教えた方が、正確に早く業務を覚え、短期間で一定レベルの戦力となってくれます。

コンサティングの相手には、先方のご事情を伺った後は、自分の実業で体験した事例や、具体的に知ってる他社の事例から入った方が、イメージを具体的に共有でき、先方に合った形でブレイクダウンしていくことで、円滑に事が運びます。

コンサルの相手は、サポートはさせて頂くものの、最終的に全て自分が意思決定をしないといけないため、こういう結果(アウトプット)になるためにはから、先方にあった形で徐々にブレイクダウンしていく入り方が適切です。

つまり新人に対しては、「言語にできるもの」から入って「言語にできないもの」を吸収してもらいます。

コンサルティングの相手に対しては、「言語にできないもの」から入って「言語にできるもの」をお手伝いする、ということになります。

全体レベルの向上を意識する

ここで重要なことは、「言語にできるもの」、「言語にできないもの」の、どちらかに偏っている時、不足している方を埋めに掛かることです。

繰り返しになりますが、極を2つ定めると、軸ができます。

軸の上を行き来することで、つまり視点を変え続けることで、輪郭があらわになります。

最近の学校教育は、「自ら考える」要素を増やし、寿司屋などの職人さんの世界は、「言語化、見える化」された育成に転換する傾向にあるなど、従来あたり前だと思われていたのと、逆のアプローチを意識していることは、決して偶然ではありません。

そうは言っても、うまくいっている時は片方に偏るものですが、予め、全体レベル向上の認識を、自分の学びや他者の育成の中に、織り込んでおきたいものですね。